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外間 智規; 木村 仁宣; 外川 織彦
JAEA-Research 2023-010, 57 Pages, 2024/02
原子力災害時に住民の甲状腺中放射性ヨウ素放射能の簡易測定を行うことが計画されている。簡易測定にはスクリーニングレベル:0.20Sv/hが目安として設定されており、原子力災害等の状況に応じて適切に見直すこととされている。しかしながら、スクリーニングレベルの見直しに関する具体的な方針は定められていない。スクリーニングレベルの見直しについては、甲状腺内部被ばく線量の判断レベルや簡易測定の実施期間等、簡易測定の可否に係る要因について考慮する必要がある。本研究では、スクリーニングレベル:0.20Sv/hの設定根拠を整理するとともに、原子力災害時におけるスクリーニングレベル見直しの実行性について考察を行った。スクリーニングレベルを0.0250.50Sv/hの範囲で見直した場合の判断レベルと実施期間との関係を計算し、スクリーニングレベル見直しの実行性について考察を行った。その結果、スクリーニングレベルの見直しについては、適切な判断レベルと実施期間を選択しなければならないという技術的な制約はあるものの実行可能であることが分かった。しかしながら、原子力災害時の簡易測定の実際を想定した場合、スクリーニングレベル見直しについては、実施期間の延長が必要な状況において0.0300.20Sv/hの範囲で設定することが妥当であろうと評価した。
眞田 幸尚; 御園生 敏治; 尻引 武彦*
海洋理工学会誌, 27(2), p.37 - 44, 2023/12
本稿では、福島第一原子力発電所事故後に実施された海洋モニタリングの概況、USVの開発・運用経験、今後の原子力防災のためのツールとしての無人船舶の適用可能性などについてまとめた。海水で0.01Bq/L以下、海底土で10Bq/L以下。このような環境放射線モニタリングに使用するため、3機のUSVの運用試験を継続的に行っている。これらのUAVは、性能に応じて、海水サンプリング、海底土壌表層の直接測定、海底土壌サンプリングへの利用を視野に入れ、開発を進めている。今後の原子力発電所事故に備え、USVの開発促進が必要である。
休石 美佐*; Masoudi, P.*; 西村 拓*; 越智 康太郎; Ye, X.*; Aldstadt, J.*; Komissarov, M.*
Radiation Measurements, 168, p.106978_1 - 106978_16, 2023/11
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Nuclear Science & Technology)本研究では、福島県の森林内の落葉及び常緑樹の直下で、可搬型及びバックパック式シンチレーション検出器を用いて空間線量率分布を調査した。地形の特徴が空間線量率に及ぼす影響を評価するために、5つの地形パラメータに対して、多変量適応回帰スプライン(MARS)による検討を行った。森林内の空間線量率分布は不均一であり、時間の経過と共に、空間線量率が1Sv/h以上変動していた。これは、地面の湿潤度などのパラメータが影響していることが示唆された。全てのパラメータに対するMARSモデルの決定係数(R)は、0.54又はそれ以上であった。空間線量率と土壌汚染レベルに対する地形の影響が一致しているかどうかを議論するために、現場で測定された空間線量率と土壌中放射性セシウムの深度分布から推定された空間線量率を比較した。土壌試料から推定される空間線量率は、ほとんどが現場での測定値の範囲内であった。
古田 琢哉
Isotope News, (787), p.20 - 23, 2023/06
炭素線治療は従来の放射線治療よりも腫瘍部への線量が集中する優位性を持つが、正常組織での二次的ながんの発生原因となり得る照射を完全に無くすことは困難である。現状の線量評価では治療効果と周辺重要臓器の急性障害の回避を目的に治療部位近傍に限定した評価が行われており、2次発がんなどの副作用に影響する低線量の領域まで評価が行われていない。そこで、重粒子線治療の計画データを基に、重粒子ビーム照射体系を再構築し、PHITSによって、2次粒子の挙動も含めて重粒子線治療を正確に再現するシステムRT-PHITS for CIRTを開発した。このシステムを用いることで、過去に実施された重粒子線治療の患者全身における線量評価が可能で、評価結果を治療後の2次がん発生等の疫学データと組み合わせることで、放射線治療後の副作用と被ばく線量の相関関係を明らかにすることができる。
高橋 成雄*; 櫻井 大督*; 長尾 郁弥; 操上 広志; 眞田 幸尚
シミュレーション, 42(2), p.68 - 75, 2023/06
本稿では、事故後行われてきた地上および空中放射線モニタリングを通じて蓄積されてきた、空間線量率の時空間分布に関するデータから、放射性物質の沈着過程の理解や、除染作業による線量率低減度の評価に関する科学的知見を、視覚解析を通じて得ることができた事例を紹介する。また関連して、今後の原発事故からの復興の施策立案の一助となる重要な知見を効果的に得るための、今後の取り組みについての展望を図る。
高橋 成雄*; 操上 広志; 眞田 幸尚; 櫻井 大督*
ERAN2022年度成果報告書(インターネット), 1 Pages, 2023/04
本研究は、除染効果の多角的かつ定量的な評価を通じて、精度の高い除染効果評価技術の確立を目指すものである。試行的な解析により視覚解析技術の適用性を確認した。
横山 須美*; 浜田 信之*; 辻村 憲雄; 欅田 尚樹*; 西田 一隆*; 江崎 巌*; 加藤 昌弘*; 大久保 秀輝*
International Journal of Radiation Biology, 99(4), p.604 - 619, 2023/04
被引用回数:1 パーセンタイル:22.69(Biology)2011年4月、国際放射線防護委員会は、水晶体の職業被ばく限度の引き下げを勧告した。この新しい水晶体線量限度は、これまで多くの国で取り入れられており、また他の国でも規制実施に向けた議論が盛んに行われている。日本では、2013年4月に日本保健物理学会(JHPS)、2017年7月に放射線審議会で議論が開始され、2021年4月に新しい水晶体線量限度が規制実施されることになった。その経験を共有するために、日本での状況をまとめた論文を、2017年初頭までに入手可能な情報に基づく第1論文、2019年初頭までに第2論文と、順次発表してきた。本稿(シリーズ3回目)では、新たな水晶体線量限度の規制実施、審議会の意見を踏まえた関係省庁の最近の議論、安全衛生管理体制の構築過程、水晶体線量モニタリングと放射線安全に関するJHPSガイドライン、認可事業者の自主対策、水晶体線量校正方法の開発、原子力作業者の水晶体被ばくと水晶体への生物影響に関する最近の研究など、2022年半ばまでに入手できる最新の情報に関して検討することを目的とするものである。
眞田 幸尚; 時吉 正憲*; 西山 恭平*; 佐藤 里奈; 吉村 和也; 舟木 泰智; 阿部 智久; 石田 睦司*; 長峰 春夫*; 藤坂 基幸*
日本原子力学会和文論文誌(インターネット), 22(2), p.87 - 96, 2023/04
福島第一原子力発電所の事故以来、多くの除染作業が行われたが、作業員の被ばくに関するデータは必ずしも詳細に分析されているとは言い難い。本論文では、作業員が個人線量計とともに携行したGPS位置情報をもとに、作業区域の空間線量率や作業種別ごとの特徴を分析した。その結果、実測線量の50%以上が、空間線量率と実働時間から計算される計画線量の中央値の2倍以上であることがわかった。さらに、作業種別に分析した結果、解体作業者の被ばく線量が高い傾向にあり、これは、作業現場での線量を低減するために、作業前にほとんどの作業を実施していることが原因であることがわかった。また、空間線量から実効線量への換算を考慮すると、計画値が実測値より低くなる過小評価の事例が多く、適切な作業係数を設定することが管理上重要であると考えられる。
眞田 幸尚; 佐々木 美雪; 操上 広志; 三上 智
Journal of Nuclear Fuel Cycle and Waste Technology, 21(1), p.95 - 114, 2023/03
福島第一原子力発電所(FDNPS)事故後の数十年間で、事故初期と比較して環境線量率は著しく低下している。このような状況の中、政府プロジェクトとして、周辺線量率や放射性セシウム分布の調査が継続的に実施されている。分布の全体像を把握するためには、有人ヘリコプターや無人航空機(UAV)を用いた空中調査が最適である。しかし、住民の近くで正確に測定するためには、地上での調査が必要である。これらの方法の違いには、土地利用における放射性核種の堆積後の挙動に関する知見が含まれる。調査結果は、避難区域の解除や除染などの対策など、政策判断の基礎となるものである。これらの調査には、事故後の対応に関する重要な知見が含まれている。本稿では、FDNPSを中心とした政府プロジェクトの調査方法と現状を紹介する。また、住民に情報を提供するための可視化手法や周辺線量率のデータベースについても検討する。
吉村 和也; 眞田 幸尚; 佐藤 里奈; 中山 真理子*; 坪倉 正治*
Journal of Radiation Research (Internet), 64(2), p.203 - 209, 2023/03
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Biology)福島第一原子力発電所事故後、多くの自治体や政府、研究機関によって住民の個人被ばく線量が評価されてきた。この評価には、個人線量計による測定やシミュレーションなど、目的に応じて様々な方法が用いられてきたが、評価内容や方法に関する情報は体系的に整理されていない。これまでに蓄積された個人被ばく線量評価の知見や経験を包括的にレビューし、評価手法の特徴を把握することは、政府の政策立案に続き、放射線防護やリスクコミュニケーションに非常に有用である。本報告書では、FDNPS事故後の住民被ばく線量評価に関する国や研究機関の取り組みについて、第1部で概観し、第2部では、FDNPS事故後の住民被ばく線量評価に関する国や研究機関の取り組みについて概観した。一方、個々の被ばく線量を評価する方法には、それぞれ不確実性や適切な評価のために考慮すべき点 が存在する。これらの知見や経験は、評価の実施や評価結果を政府の政策立案に活かすために重要であり、本稿のPart2でまとめている。
日下部 一晃*; 渡邊 雅範; 西内 征司*; 山崎 琢平*; 井上 広海*
環境放射能除染学会誌, 11(1), p.15 - 23, 2023/03
2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故による放射性物質の拡散に伴い、福島県をはじめ、広範囲にわたる地域が汚染された。除染や放射性物質の物理減衰等により、福島県内の空間線量率は着実に逓減しているが、放射線被ばくに不安を持つ県民のため、生活圏における除染効果の持続性を確認するとともに、将来的な空間線量率の推移を予測することで、安心に繋がる情報を提供することが重要となる。本報は、除染後の公共施設における除染効果の持続性を継続的且つ詳細に確認するとともに、将来の空間線量率の推移を既存のモデルによって予測できるか確認することを目的とした。除染後の公共施設の空間線量率を定点調査及び歩行調査により測定し、施設毎の空間線量率の変化を定量的に明らかにした。また、実測値と既存のモデルによる計算値を比較し、予測精度について検討した。調査対象としたいずれの施設においても除染後の明らかな再汚染は起きておらず、除染効果が持続していることがわかった。除染後の施設における将来の空間線量率の推移は、既存のモデルにより精度よく予測できることを確認した。
鈴木 元*; 石川 徹夫*; 大葉 隆*; 長谷川 有史*; 永井 晴康; 宮武 裕和*; 義澤 宣明*
Journal of Radiation Research (Internet), 63(6), p.796 - 804, 2022/11
被引用回数:2 パーセンタイル:27.14(Biology)2011年の福島第一原子力発電所事故による被ばく線量と甲状腺がんの関係を明らかにするために、小児の甲状腺等価線量(TED)を評価する必要がある。これまでに、行動調査データと大気拡散モデルにより構築した放射性物質の時空間分布データベースを組み合わせたTED再構築手法について報告した。本研究では、この手法をさらに精緻化し、原発周辺16市町村における3256人の行動調査データに基づき、小児のTEDを評価した。TED評価結果は、いわき市,川俣町,飯舘村,南相馬市の小児1080人の測定データと近い値であった。1歳児のTEDの平均値は伊達市の1.3mSvから南相馬市小高地区の14.9mSvの範囲であり、95パーセンタイル値は伊達市の2.3mSvから浪江町の28.8mSvの範囲であった。本研究成果は、今後の甲状腺がんの調査に有効活用される。
神崎 訓枝; 迫田 晃弘; 片岡 隆浩*; Sun, L.*; 田中 裕史; 大津 厳生*; 山岡 聖典*
International Journal of Environmental Research and Public Health, 19(17), p.10750_1 - 10750_14, 2022/09
被引用回数:0 パーセンタイル:0(Environmental Sciences)活性イオウ分子種(RSS)は、酸化ストレスに深く関連して抗炎症作用があると報告されているが、放射線被ばく後のRSSの変化についてはまだわかっていない。そこで、本研究では、ラドン吸入後のマウス脳中のRSSに注目し、関連代謝物を網羅的に解析した。その結果、酸化型グルタチオンと還元型グルタチオンの割合、グルタチオンおよびシステインのRSSの割合はラドン吸入によって増加した。本研究でのラドン曝露は非常に低線量であったが、その酸化ストレス下でイオウイオンがグルタチオンやシステインに結合したと考えられる。また、我々は、機械学習を用いた代謝物の変化の総合的な評価により、ラドン吸入による特徴的な変化を明示した。本研究の結果は、RSSがラドン吸入の酸化ストレスに対する生体防御機構をもたらす可能性を示唆した。
廣内 淳; Charnock, T.*
Proceedings of 14th International Conference on Radiation Shielding and 21st Topical Meeting of the Radiation Protection and Shielding Division (ICRS-14/RPSD 2022) (Internet), p.195 - 198, 2022/09
ERMIN (European Model for Inhabited Areas)は、欧州の二つの原子力事故意思決定支援システムにモジュールを提供しており、放射性核種に汚染された居住地域の人々の線量を計算するコードである。ERMINはEMRAS IIプログラムによって他のモデルと比較検証されている。ERMINの入力パラメータは、主にチェルノブイリ事故後に取得されたパラメータが基となっている。しかし、これらのパラメータは国や地域によって異なる可能性がある。ERMINを他の地域に適用した場合の計算線量の不確実性やばらつきを理解するためには、各パラメータが線量にどの程度影響するかを調べることが重要である。そこで、本研究では福島原子力発電所事故後に測定されたパラメータに関する文献を調査し、日本でのパラメータとERMINで使用されているパラメータを比較した。さらにそれらのパラメータ値および不確かさを用いて線量を計算し、線量の違いおよび各パラメータの線量への寄与を調査した。その結果、特に保持力と土壌浸透に関するパラメータ,空気交換率,室内での沈着率が線量評価に大きな影響を与えることを示した。
佐久間 康太; 阿部 大智*; 岡田 翔太; 菅谷 敏克; 仲田 久和; 坂井 章浩
JAEA-Technology 2022-013, 200 Pages, 2022/08
我々は、研究施設等廃棄物の埋設処分に向けて、トレンチ処分及びピット処分の区分や重要核種を選定する際の参考値とするために、廃棄物に含まれる可能性のある放射性核種について、トレンチ処分及びピット処分における基準線量相当濃度の試算を行っている。前報である「研究施設等廃棄物の浅地中処分のための基準線量相当濃度の検討(その1)」では、原子力安全委員会がトレンチ処分及びピット処分の濃度上限値を算出した手法を基に、廃棄物埋設施設の立地環境を幅広く想定して中深度処分の被ばく経路等を対象に基準線量相当濃度の試算を行った。本報告書は、ピット処分の廃棄物埋設施設からの浸出水量の感度解析評価の結果を用いるとともに、埋設地の条件を幅広く想定した新たな評価経路及び被ばく形態を取り入れて、ピット処分の基準線量相当濃度の試算を行い、前報との比較を行ったものである。なお、本報告書で試算した基準線量相当濃度の結果は、立地場所が決定していない段階でのピット処分の区分や重要核種を選定する際の参考値として用いることを考えているため、今後、立地場所の決定後に立地条件を踏まえて線量評価を行う必要がある。
谷村 嘉彦
FBNews, (548), p.1 - 5, 2022/08
原子力災害発生時においては、多数の住民・作業者を対象とした甲状腺ヨウ素モニタリングを、事故後速やかに実施する必要がある。日本原子力研究開発機構では、災害時の高バックグラウンド線量率下でも使用可能な小型で取り扱いが容易な遮蔽一体型甲状腺モニタの開発を行っている。開発した甲状腺モニタシステムの概要及び放射線標準施設棟の線標準校正場等で実施した性能試験から得られた結果を報告する。
吉澤 道夫
日本原子力学会誌ATOMO, 64(8), p.439 - 441, 2022/08
わが国では、放射線業務従事者の個人線量を登録管理する制度(線量登録管理制度)が原子力分野を除き整っていない。このため、日本学術会議から提言「放射線作業者の被ばくの一元管理について」が出された。しかしながら、現在も一元管理は実現していない。そこで、アンブレラ事業の中に国家線量登録制度検討グループを設置し検討を行った。学術会議の提言が実現しなかった要因として、広くステークホルダーを巻き込んだ議論になっていなかったこと、特に国と事業者の両方に支持されなかったことが大きい。このため、本検討グループでは、4つの制度案とそれらの展開を学会等のステークホルダー会合で報告し、意見を求めながら検討を進めた。その結果、分野別に状況・課題がかなり異なる(原子力分野は新しい制度が不要、医療分野は制度の必要性は高い、大学関係は線量管理よりも記録の合理化が優先課題)ことから、まず制度が未確立の分野(特に医療分野)が特徴にあった制度を構築し、将来的に全分野統一的な制度を目指すアプローチがよいとの結論を得た。また、登録すべき情報及び具体的な線量登録フローを検討し提案をまとめた。
古田 琢哉; 古場 裕介*; 橋本 慎太郎; Chang, W.*; 米内 俊祐*; 松本 真之介*; 石川 諒尚*; 佐藤 達彦
Physics in Medicine & Biology, 67(14), p.145002_1 - 145002_15, 2022/07
被引用回数:2 パーセンタイル:47.19(Engineering, Biomedical)炭素線治療は従来の放射線治療よりも腫瘍部への線量集中性に関する優位性を持つが、二次的ながんの発生原因となり得る正常組織への照射を完全に無くすことは困難である。そのため、発がんリスクを照射炭素ビームの核反応によって生成される二次粒子による線量まで含めて評価するには、計算シミュレーション解析が有効となる。本研究では、PHITSコードを中核とした炭素線治療の線量再構築システムを開発した。このシステムでは、治療計画を記録したDICOMデータから自動でPHITSの入力ファイルを作成し、PHITSシミュレーションの実行によって腫瘍および周辺正常組織での線量分布を計算する。PHITSの様々な機能を利用することで、粒子毎の線量寄与や二次粒子の発生場所の特定など、詳細な解析が実施可能である。開発したシステムの妥当性は、水中での線量分布の実験結果や人体等価ファントムへの治療計画との比較により確認した。今後、本システムは量子科学技術研究開発機構において、過去の治療データを用いたシミュレーション解析による遡及的研究に利用される予定である。
真辺 健太郎; 佐藤 薫; 高橋 史明
Journal of Nuclear Science and Technology, 59(5), p.656 - 664, 2022/05
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Nuclear Science & Technology)内部被ばく線量は、評価対象の体格特性に依存することが知られている。標準的コーカソイドの体格特性に基づく人体モデルを用いて評価された国際放射線防護委員会(ICRP)の線量係数を日本人に適用するにあたっては、コーカソイドと日本人の体格特性の違いによる線量係数の変動幅について把握しておくことが重要である。本研究では、平均的成人日本人モデルに基づく既存の比吸収割合データ(SAF)に対しICRP 2007年勧告に完全に準拠した最新の線量評価手法に合致するよう追加計算を伴う修正を行うとともに、平均的な日本人体格特性を反映した実効線量係数を評価し、ICRPの線量係数と比較した。その結果、8割程度の摂取条件については差違が10%以内となった。ただし、一部の摂取条件では、臓器質量の違いや胸腔周辺の皮下脂肪量の違いにより、40%程度変動することが確認された。本研究により得られた知見は、ICRPの線量係数を異なる体格特性を持つ集団に適用する際に有用である。なお、本研究で整備した日本人SAFの電子ファイルは付録として公開される。
横山 須美*; 辻村 憲雄; 橋本 周; 吉富 寛; 加藤 昌弘*; 黒澤 忠弘*; 立崎 英夫*; 関口 寛*; 小口 靖弘*; 小野 孝二*; et al.
Journal of Radiation Protection and Research, 47(1), p.1 - 7, 2022/03
日本では、2021年4月に眼の水晶体の線量限度,実用量,水晶体線量の測定位置を改定する新規制が施行された。国際的な安全基準、国内のガイドライン、原子力規制庁の放射線安全研究推進費の成果などを踏まえ、日本保健物理学会(JHPS)放射線防護標準化委員会ワーキンググループでは、水晶体の線量モニタリングに関するガイドラインを作成した。JHPSワーキンググループでは、不均等な被ばくの基準と、水晶体の線量限度を超えないように設定された管理基準について議論した。2020年7月、JHPSガイドラインが発表された。ガイドラインは、本文,解説,26の質問の3部構成となっている。質問では、それに対応する回答を用意し、類似のケースにも対応できるように具体例を示した。水晶体の線量モニタリングに関するガイドラインの作成により、放射線管理者や作業者は、改正された規制をスムーズに遵守し、放射線防護を最適化することができるようになる。